昼ドラでよく「この女狐」なんて罵り合うシーンがありますね。でもなぜ悪賢い女のことを女狐と言うのでしょう? 今回は女狐に関係ある福島の殺生石をご紹介します。
九尾の狐伝説とは
殺生石は9つの尾を持つという妖怪・九尾の狐(きゅうびのきつね)が変化したと言われる石です。九尾の狐はその昔中国の王の妃・妲己(だっき)に化けて国を滅ぼしたり、インドで美女に化けて悪行を尽くしたりという、とんでもない悪女妖怪。
玉藻前に化けて国を滅ぼそうとする妖怪
その後日本に渡って鳥羽院の愛妃・玉藻前(たまものまえ)となって国を滅ぼそうともくろんでいました。女狐の語源ってのはどうもこの伝説に由来しているようです。
石になった九尾の狐
しかし玉藻前こと九尾の狐は陰陽師に正体を暴かれてしまい那須に逃亡。朝廷は8万の軍勢を派遣して、九尾の狐を矢で射殺しました。その時九尾の狐は強大な毒の石に姿を変えたと言います。それが殺生石(せっしょうせき)と呼ばれる岩です。殺生石はその後何年も毒を吐き続けて那須の村人を苦しめました。
全国に飛び散った殺生石
そこで徳の高い僧侶・玄翁(げんのう)和尚が石を打ち砕いて殺生石を成敗。粉々になった岩は日本のあちこちに飛んでいき、今も毒を吐き続けているのだそうです。そしてその殺生石のかけらが、ここ猪苗代町まで飛んできたという伝説があるのですよ。栃木県から福島県まで吹っ飛んだとはさすが、稀代の大妖怪・九尾の狐。
かなり見つけるのが難しいスポット
これがその殺生石です! この殺生石を見つけるのは本当に苦労したんですよ。道からかなり草原を分け入ったところにある上に、標識や説明書きなど辺りに一切ありません。この記事の3枚目の写真に写っている、棒きれ(?)が唯一の目印。地元の人に場所を聞かなければ見つけるのは不可能と言ってもよいでしょう(見に行かれる方は下の地図と棒を頼りに探してくださいね)。
有毒ガスは出ていません
大きさは高さは3メートルほど、長さは6メートルぐらいあります。かなりの大岩です。ひょっとして那須の殺生石みたいに有毒ガスが出てたりしないわよね……。那須の殺生石は硫化水素、亜硫酸ガスなどを噴出しているし……。でもご安心あれ。この殺生石はちゃんと無毒化してあるのです。
玄翁和尚が割った「玄翁石・源翁石」
殺生石は真ん中でバックリ割れています。人に害をなしては大変と、玄翁和尚が那須からここまでやってきて杖で殺生石を真っ二つに割ったという伝説が残っているのです。地元ではこの殺生石は玄翁石・源翁石とも呼ばれていますが、高僧の名前からそう名づけられているんですよ。
足跡は残念ながら別れあず
猪苗代町の公式ホームページには玄翁和尚が「踏ん張ってできた足跡が、くっきりと残っている」と書いてあったんですが、残念ながらどれが足跡なのかよく分かりませんでした。
体を横にすれば入れるぐらい
割れ目は体を横にすればなんとか通り抜けられるぐらい隙間があいています。なかなか迫力ある大岩でした。昼間はいいのですが、辺りに誰もいないし、夜はかなり不気味なんじゃないかしら。足元も悪いし夜の肝試しはお勧めできません。
全国にある殺生石
殺生石は玄翁和尚によってバラバラになり全国に飛び散りました。殺生石は栃木(那須)だけでなく、新潟(上越市)、愛知県(岡崎市)、京都府(左京区)、山口県(長門市)、岡山県(真庭市)などに存在します。
岡山県真庭市の殺生石は直接見ることはできませんでしたが(地面に埋まってるから)、福島の殺生石は触れるのがいいですね。
キツネかわいそうだね……
それにしても日本では人をだますとか、ずる賢いとかネガティブなイメージがついてまわるキツネはちょっとかわいそう。英語ではfox(foxy)は「セクシー、美人」なんて良いイメージもありますが、cunning as a fox(キツネみたいにずるい)とも言いますよね。実物のキツネはもふもふで可愛らしいのにな。他の国々ではどうなんでしょうね?(2013年11月27日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
殺生石(せっしょうせき)
住所 :福島県耶麻郡猪苗代町磐根土田
電話 :0242-62-2048(猪苗代観光協会)
時間 :見学自由
料金 :無料
駐車場:なし
関連URL:猪苗代町/会津を構成する市町村/会津への夢街道