井上圓了は明治〜大正に活躍した哲学者。東洋大学の創立者としても知られますが、彼の別の顔は『妖怪学』の権威。そんな井上博士が建設した、東京中野区の哲学堂公園を訪れました。
「考える人=哲人」を養成するための修行道場
哲学堂公園(てつがくどうこうえん)は哲学を学ぶための場として人びとを啓蒙するために、明治39年に大哲学者の井上円了博士個人が全財産を投じて開設した公園です。「考える人=哲人」を養成するための修行道場として作ったそうですよ。これは哲理門(てつりもん)。通称・妖怪門。河原に「哲」の文字が入っています。
哲理門の中に入っているのは……?
普通、この手の門には仁王様が奉られていますよね。でも哲理門には右側に天狗、左側に幽霊の像があるんです。天狗を物質界、幽霊を精神界の象徴として不思議・不可解を表しているんだとか。
妖怪学のエキスパート・井上博士の妖怪っぷり
井上博士は妖怪学のエキスパートだけあって、彼自身も妖怪っぷりが炸裂しています。水木しげる先生のような感じだったのかな。彼の書斎は天井や壁がびっしり妖怪の絵で埋まっていたそうですよ。天狗と幽霊の門なんて序の口。
幽霊が出ると騒ぎになった梅の木
これは園内の幽霊梅。井上博士が駒込に住んでいたころ、庭の梅の木の下に幽霊が出ると大騒ぎになったんです。そのいわくつきの梅の木を移植したのがこれ。そんなおっかない木をわざわざ持ってくるなんて変わった人ねえ。
東洋の六賢人を奉った六賢臺
ここからは哲学的な建築物をご紹介。こちらは六賢臺(ろくけんだい)。聖徳太子・菅原道真・中国の荘子・朱子・インドの龍樹・迦毘羅仙を東洋の六賢人として奉ってあります。昔は6人の肖像額を6つの壁の各面に掛けていたそうですが今は見られません。
釈迦・孔子・カント・ソクラテス
こっちは四聖堂(しせいどう)。釈迦・孔子・カント・ソクラテスの4人の哲学者を奉ってあります。数ある哲学者の中でなぜこの4人なのかは知りません。井上博士の好みかな。
唯心論的呼称をもつ諸部分……?
奥に進むとさらに厳しい哲学の修行が始まります。唯心庭にある説明書は
唯物園に対する小庭で唯心論的呼称をもつ諸部分が見られる
うう。「唯心論的呼称」が分かんないよ。
池の真ん中に奇妙な鬼の像
池の真ん中にある奇妙な鬼の像・鬼燈(きとう)には
唯物園の狸燈に対した燈籠で、人の心中に宿る鬼にも良心の光明は存することを寓している
な、なんとか理解できたぞ。
延々と続く難解な説明書き
直覺經(ちょっかくけい)にいたっては
唯心庭より丘上の論理域に達する近道を選ぶとするならば、この直覺經を行けばよい
行けばよいって言われても「丘上の論理域」がさっぱりだわよ。
いつかは私も哲学的になれるかな
園内は広く、こんな調子で延々と難解な説明書きが続くんです。私の無知っぷりが露呈され落ち込みましたが、ここに通い続ければいつかは私も哲学的に啓蒙されるかもしれません。(2006年08月27日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
哲学堂公園(てつがくどうこうえん)
住所 :東京都中野区松が丘1-34-28
電話 :03-3951-2515
時間 :08:00~18:00(04月~9月)09:00~17:00(10月~03月)
休園日:年末
入園料:無料
駐車場:無料(数台)
関連URL:中野区立哲学堂公園のサイト