東京品川区の船の科学館には、別館として2隻の船が展示されています。前回の羊蹄丸に続いて、今回は我が国初の南極観測船宗谷をご紹介。感動的な船です。
南極観測船にしては小さい!
宗谷は船の科学館本館と羊蹄丸(ようていまる)に挟まれた位置にあります。羊蹄丸と同じく海の上に浮かんでいる船上博物館。南極観測船は装備もしっかりした巨大船というイメージがあったのですが、かなり小さいんです。こんな小さな船で南極まで到達できたのかなと不安になるほど。
船長室の様子
船長室の様子です。後ろを向いている船長さんが少々不気味。隣に立っているのは当時の防寒のための装備を身に着けたマネキン。現代のハイテク装備に比べるとこれで南極の寒さに耐えられるのかと心配になります。
宗谷の数々の遍歴
不安要素はそれだけではありません。宗谷は昭和13年(1938)に旧ソ連向けの耐氷型貨物船として進水したものの、日本の貨物船・地領丸として完成。その後昭和15年(1940)には旧日本海軍の特務艦・宗谷になり、戦後には引き揚げ船・灯台補給船として活躍。そして昭和31年(1956)に南極観測船に大改造されたそうです。
決死の覚悟で南極へ
本来なら引退寸前のご老体なのに、南極へ送り出すなんて無茶すぎ。費用の余裕がなかったらしいのですが、観測隊員は決死の覚悟で南極へ乗り出したのではないでしょうか。
しかし宗谷は頑張った。昭和31年11月から昭和37年4月まで6次もの南極観測に大活躍。昭和53年に引退するまで海上保安庁の巡視船として働き、今は船の科学館で博物館として余生を送っています。
観測隊員の苦労がしのばれる
もちろん隊員の方々も頑張った。船室の4人部屋は狭く、ベットは成人男性ではギューギュー。プライバシーなんて二の次でしょう。また冷房施設がなかったため、赤道付近では耐えきれないほどの暑さになったそうです。
宗谷と隊員に拍手を送りたい
それでも隊員は毎日の料理に工夫をこらしたり、時々パーティーをしたりして楽しみを見つけながら南極観測の任務を遂行したんですね。国民の期待を背負って精一杯頑張った宗谷と観測隊員の心意気に、拍手を送りたくなりました。
壁の文字に胸が熱くなる
壁に書かれた隊員の文字。
偉大な宗谷よさようなら いつの日か又逢いに来る
胸が熱くなりますね。
このマネキンはどうなのか……
ただ羊蹄丸に比べると、マネキンや小道具の作りがいまひとつなんですよ。みんな同じ顔だったり、ヅラがずれてたり……。せっかくの感動の船なのに珍の香りが立ちこめてしまっているのでした。
ゴージャスな本館に驚く
ついでと言ってはなんですが、別館だけでなく船の科学館・本館の雰囲気もお伝えしておきましょう。ロビーはとにかくゴージャス。大理石にシャンデリア。財団法人日本船舶振興会(日本財団)の財力がうかがえるというもの。博物館は地下1階から6階、展望塔まであります。
海軍オタクのみなさまにも人気
実物資料や模型の量もすごい。とくに軍艦の模型の充実っぷりは素晴らしく、海軍オタクのみなさまの熱い視線を集めています。船の全てが分かる船の科学館。羊蹄丸・宗谷・本館共通券の1000円はかなりお得と言って良いでしょう。(2006年08月27日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
船の科学館・宗谷(そうや)
船の科学館本館は休館となっており、初代南極観測船宗谷を中心とした屋外展示資料と別館 展示場のみ公開しています。また2012年に青函連絡船・羊蹄丸の展示は終了し2013年に解体されました。現在はありません。内部にあった青函ワールドは青森港の八甲田丸に引っ越しました。住所 :東京都品川区東八潮3番1号
電話 :03-5500-1111
時間 :10:00~17:00(平日)
休館日:月曜・年末年始
入場料:無料
駐車場:有料(1時間300円・以降30分100円)
関連URL:船の科学館 公式ホームページ(Museum of Maritime Science)