様々な秘境を旅してきました。でもこれほどの地はめったにありません。熊本県南阿蘇村の清水滝は幻想的な滝を背景に珍妙な像が乱立しています。アクセスが非常に困難な珍スポットです。
地元観光課の人でさえ知らない超マイナースポット
事前に町役場で場所を確認しようとしたのですが、観光課の方さえ清水滝(しみずだき)のことをご存知ありませんでした。地元観光課が知らないほどの超マイナースポットなので覚悟はしていたのですが、これほど訪れるのが困難とは思いもよらなかったのであります。
クルマでウロウロしていると道の端のとても小さな木の札に「清水滝」と書いてあるのを発見しました。先へ進むと大きめの案内板があったのでホッとしました。
顔がついている奇妙な門
道を進んでいくと二つの門が見えてきました。どうも山門のようです。白い壁にはぎょろりと目を向いた顔が描かれていて上に天平風(?)のお堂が乗っています。門の左には赤鬼、右には青鬼。中央にはお地蔵様の像があるのですが、仏師の作というよりは手作り感いっぱいのデザイン。
赤鬼と青鬼とお地蔵様
近づいてみると塗装が禿げてしまっていてボロボロ。左の道の先にはお堂が、右側には石仏の並んだ広場がありました。どうもここは目指す滝ではないようです。ここから先はクルマでは進めないようなので引き返すことにしました。
一旦引き返して別のルートで清水滝へ
道を間違えたんだろうかとまたウロウロしていますと、別の案内板が出てきました。清水滝まで1.8キロ。今度こそと道なりに進んでみました。しかし後述しますがこの道が大変狭く、いつ脱輪するかヒヤヒヤものでした。ここを訪れる方にはなるべく小さいクルマかバイクをお勧めします。
こんなに曲がりくねった細い道は初めて
これまでも離島など「秘境」と呼ばれる場所はたくさん訪れていたつもりです。でもここまで曲がりくねった狭い道を通ったのは初めてです。対向車がいたら絶対にすれ違うことはできません。四苦八苦してようやく駐車場までやってきました。
清水滝普賢象の由来
案内板にはこう書かれています。とても興味深いので全文書き起こしてみました。
清水滝普賢象の由来
大阿蘇山のこの地は、日本敬神崇祖自修団の開祖である戸次貞雄恩師(ツカサ様)が天地創造神のお告げにより、ここ清水滝の洞で十余年間の修行と研錯により宇宙の真理をひも解かれ、天地創造の神の御心に沿った行いを実践すれば豊かな人生を送ることが出来るという悟りを聞かれた地です。
晩年、恩師は自分の修行、布教のために顧みる事が出来なかった奥様と三人の子供に思いを馳られ、仏の使者でもある象の背に四人の立ち姿を乗せた造形を作ろうと思い立たれ、まだ、道も無かった清水滝に資材の運搬など多数の奉仕の村人達を含め、恩師ツカサ様を慕う人々によって心血を注ぎ建立(昭和三十八年九月完成)されました。
此処に立って、滝の音と白川源流のせせらぎを聞いていますと、恩師の読経の声にも、お話の声にも思われます。
お参り頂いた方々も、此の地でご先祖様からのご守護を感じられ、世の中への奉仕や貢献が人としての生きる道である事を感得して頂ければ幸いです。平成二十三年九月吉日 日本敬神崇祖自修団
つまりここは日本敬神崇祖自修団(にほんけいしんすうそじしゅうだん)という新興宗教団体の教祖である戸次貞雄(べつきさだお1897~1965)氏が清水滝に建てた宗教施設なんですね。戸次貞雄氏の経歴が普明会教団公式サイトに書いてありました。法華系の新興宗教で、本部は福島県福島市にあるそうです。
崩壊したりしないかとビクビクしつつ進む
駐車場からは歩きで滝まで行くのですが、これが大変な悪路です。前日に雨が降ったからか道がぬかるんでいた上に、途中細い板が乗っただけの橋を渡らねばなりませんでした。これ大丈夫なんだろうか、崩壊したりしないんだろうか──と不安になりながら降りていきました。
真っ白なゾウが見えてきた!
真っ白なゾウが見えてきました。これが約50年前に教祖様が「布教のために顧みる事が出来なかった奥様と三人の子供に思いを馳られ、仏の使者でもある象の背に四人の立ち姿を乗せた造形」なのでしょうね。
2016年04月10日時点に存在していた小屋がない!
事前にネットで下調べしていた時の画像と大きく違っていたのは、ゾウの背後にあった建物が完全に崩壊していたことです。せつらさんによるブログ「ようこそ阿蘇の怪しいパワースポットへ。:どっかいこうや 第二章」を見ると、2016年04月10日の時点の写真では建物はまだ存在しています。
熊本地震によって崩れ去ったのかは不明だが……
その4日後に発生した熊本地震によって崩壊したものかどうかは定かではありませんが、現に建物が崩れてしまっており地震後に地盤が緩んでいる可能性もあるので、ゾウに近づくのは非常に危険であると思われます。訪れる方はくれぐれもご注意ください。
美しすぎる秘境そのものの滝
それにしてもこの清水滝の美しいことと言ったら息を呑むほどです。辺りは鳥のさえずりと滝の流れる音のみが響いていてまさに秘境そのもの。幻想的で現実感が薄く、戸次貞雄氏が「宇宙の真理をひも解かれ」と書かれているのも、納得してしまうような荘厳な場所なのです。
【動画】清水滝の風景を動画でどうぞ
動画で清水滝を撮影してみました。私が訪れたのは初夏の午前10時半でしたが、霧立ち込める早朝や黄昏時ならまた違った美しさがあるだろうなあと思いました。
……まあ、カラフルな像のヘンテコ具合は目をつぶってください。
洞窟内は落石のおそれがあり立入禁止
滝の上に洞窟があるようなので、川を渡って階段を上ってみました。ところが「キケン!この先立入禁止」と書かれた看板がありましたので洞窟には入れず。落石の危険があるために洞内に入るのはご遠慮くださいとのこと。残念。
真新しい赤いべべを着たお地蔵様
途中には赤いべべを着たお地蔵様が二体。布が真新しい感じだったので、信者の方が訪れているのでしょうね。ただ注意書きは結構古そうに感じたので、熊本地震以前から洞窟内には入れないようになっていたのかもしれません。
洞窟の先には極彩色の不動明王像
洞窟の奥には極彩色の不動明王像がありました。その両側にも童子がいましたがこの距離でははっきりとは分かりませんでした。この不動明王も色鮮やか。50年前に塗られたままではなく、最近塗装しなおされたようでした。
妙な迫力がある赤鬼の像(トラのパンツつき)
近くで見られる像はこの鬼のみ。妙な迫力があって、今にも動き出しそうで怖い。それにしてもトラのパンツはいいとしても、股間にトラの頭があるデザインは面白いですね。なんで鬼の像なんか作ったのかしら。由来など一切説明がなかったので謎でした。
途中で見られる牛の群れにも注目
清水滝にたどり着くまではかなり大変です。でも苦労して見る価値がある絶景ですよ。熊本地震以降崩落の危険性があるため、あくまでも自己責任で探訪をお願いします。なお狭く曲がりくねった道の途中でたくさんの牛ちゃんも見られます。カワイイので必見です。(2017年05月06日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
清水滝(きよみずだき)
住所 :熊本県阿蘇郡南阿蘇村大字白川
駐車場:無料
関連URL:普明会教団公式サイト