宮城県村田町の鬼の手掛け石は鬼が手をついた跡が残っている不思議な石です。平安時代の渡辺綱の鬼退治の伝説と、近くにある民話の里ふるさとおとぎ苑のロボットおばあちゃんを取材。
姥が懐に伝わる鬼の伝説
緑あふれる田園地帯、村田村。この地は昔から姥ケ懐(うばがふところ)と呼ばれています。お婆さんの懐というあたたかい地名の通り、姥ケ懐には代々家のお婆さんが言い伝えてきたある昔話があります。それは鬼の伝説です。
平安時代の渡辺綱と鬼
平安時代中期、武将・渡辺綱(わたなべのつな)が、京都で悪事を繰り返す鬼の片腕を切り落としました。渡辺綱はその腕を姥が懐の家に持ち帰りました。鬼は腕を取り返そうとして、渡辺綱の叔母に化けて彼の元を訪ねます。叔母は腕を掴むと鬼に変身し、囲炉裏の自在鉤(じざいかぎ)を伝って逃げ出しました。
姥が懐の家には自在鉤がない
自在鉤……って若い人はもう分かんないよね。私も実際使ったことないんですが、自在鉤とは囲炉裏の上に鍋や釜、鉄瓶などをひっかけて使うものです。姥が懐の地方では鬼を再び逃さなないように、家に自在鉤をつけなくなったそうですよ。現代のキッチンでは自在鉤はないから、鬼は換気口から逃げるのかしらね。
また普通は節分の掛け声は「鬼は外、福は内」ですが、姥ケ懐では「鬼は内、福も内」と言うんだとか。面白いですね。
鬼が転んで手をついた時に手形がついた石
写真は鬼が小川を越えて逃げる際に転んで手をついたと言い伝えられている鬼の手掛け石です。小さな雑木林の中にひっそりと祀られています。
岩にしっかりとついた手の跡
大きさは40センチ×50センチほどでしょうか。真ん中、やや右よりに指の跡のようなへこみがついています。よく見ると、右手の形にうっすらと窪んででいるんですよ。意外にしっかりと人の手の跡のように見えます。
金太郎を背負ったお婆さんの手の跡?
また一説には、姥ケ懐に住んでいたおばあさんが、金太郎を背負って川に行き、帰りに坂を登るときに金太郎があまりに重いので、石に手をついたところその部分が凹んだ──という伝説もあります。なるほど石の向こうには小川が流れていますもんね。でも金太郎重すぎ、お婆さん怪力すぎ。
私の手ぐらいちっちゃな跡
手掛け石の手の跡に私の手を近づけてみました。私は159センチの身長の割に手足が小さく(足のサイズは21センチ)、手も一般女性よりもかなり小ぶりなのですが、石の手の跡は私と同じぐらいの大きさです。おばあちゃんのサイズとしては妥当。鬼としたらかなりちっちゃい手ですね。
はたしてこの手の跡は鬼かおばあちゃんか(もしくは単なる偶然できた穴か)……? 鬼の伝説に関連して同じ村田町にある鬼のミイラも見てきました。こちらのレポートもぜひどうぞ。
民話の里・ふるさとおとぎ苑
さて。鬼の手掛け石の近くには民話の里・ふるさとおとぎ苑という施設があります。水車小屋や昔の建物などが保存されており、私はここで地元名物のおそばをいただきました。この中にある民話伝承館が現在入場無料とのことで見てみました。
ロボットおばあちゃんの昔話
以前は、ロボットおばあちゃんが囲炉裏端で昔話を聞かせてくれるという趣向だったのですが、現在昔話のアトラクションは中止されている模様。渡辺綱の物語をお話してもらおうと思ったのに残念……。
あれ? この囲炉裏には自在鉤がついてる。この地方には自在鉤がないはずなのに。
おばあちゃん怖すぎ!
でも鬼の話より怖いのが、ロボットおばあちゃんの顔ですよ。半分白目をむいて、顔はススだらけ。着物もボロボロで囲炉裏端に佇んでいる姿にぎょっとしてしまいます。これはこれで「珍」で面白いんだけど、ぜひ整備して昔話を復活してほしいなあ……。(2014年05月03日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
鬼の手掛け石(おにのてかけいし)民話の里ふるさとおとぎ苑(みんわのさとふるさとおとぎえん)
住所 :宮城県柴田郡村田町大字小泉字肬石2
電話 :0224-83-4140
時間 :09:30~17:00(産直館)11:00~15:00(そば処)
休館日:月曜日
関連URL:道の駅「村田」村田町物産交流センター