沖縄県伊良部島の西にある下地島。西側海岸沿いに、不思議な人魚伝説が残る通り池があります。ダイバー憧れのダイビングスポットであり、またパワースポットとして人気を集めています。
下地島と伊良部島
地理的なことをちょっとおさらいしましょう。伊良部島(いらぶじま)は宮古島の北西部に位置する島です。その左側にあるのが下地島(しもじしま)。伊良部島と下地島の間は数百メートルしかなく、6本の橋で行き来ができるので2島で一つの生活圏にあります。
ひっそりとした観光地
現在のところ高速船で渡るしか手段がないからか(※)、私が訪れた時には観光客はほとんど見かけませんでした。でも橋ができたらかなりの人気観光地になるでしょうね。通り池(とおりいけ)は下地島の北部海岸沿いにあります。
メガネのような池
これは通り池を上から見た、国土交通省の国土画像情報です。ほぼ同じような大きさの円形の池が並んでいます。この2つの池は地下で互いにつながっていて、さらに海岸近くの池は、高さ45メートル、幅20メートルという巨大な地下洞窟で外界と結ばれているのです。
ダイバー垂涎の地
イトマキエイやサメ、ナポオンフィッシュ、イソマグロなど、海の巨大魚もたくさん生息していますし、巨大な地下洞窟は探検・冒険気分を盛り上げるため、ダイバーにとって垂涎のスポットなんですよね。今回私はダイビングはしませんでしたが、いつか潜ってみたいものです。
下地島の人魚伝説とは?
さて、ダイビングブログではないので、この美しい通り池のもうひとつの顔もご紹介しましょう。それは人魚伝説。
昔、下地島の通り池の近くの木泊村に住む漁師が、ユナイタマを釣り上げました。ユナイタマとは頭が人間で体が魚の、人魚のことです(※)。珍しいこともあるものだと、漁師はユナイタマの半身を切って近所の人に配りました。
ユナイタマよ、帰っておいで
夜中になって、近所の子供が急に泣き叫び出しました。母親が怪しく思っていると、海の彼方から「ユナイタマよ、帰っておいで」という声が聞こえました。一方島の方からは「私は体の半分を食べられてしまったから帰れません」と声が聞こえます。すると海からは「それなら大きな波を送るから、それに乗って帰っておいで」と声がしました。
下地島にいた親子は震え上がって、命からがら伊良部島へと逃げて行きました。そのあとすぐに島に大津波が三度押し寄せ、下地島の村は全て波に飲み込まれてしまいました。通り池はその大津波でできた池だということです。
悲しい人魚伝説
人魚の肉を食べると不老不死になるという伝説もありますね。でも日本各地に言い伝えられている話はどれもハッピーエンドでなく、物悲しさに満ちています。この伝説の大津波は、1771年に起こった明和の大津波であるとも言われていますが、通り池がそれでできたのかどうかは定かではありません。
地の国への入り口のような鍋底池
通り池からさらにウッドデッキを渡って奥に歩いてみましょう。すると鍋底池(なべぞこいけ)につきます。ギザギザとした鍾乳石は、まるで地の国への入り口のよう。波が荒い時には鍋底が沸騰しているかのように泡立つ、または鍾乳石に反響した音が鍋底を響かせるようだ──ということから名付けられたとか。
母親のお腹の中の音
その音は赤ちゃんが母親のお腹の中で聴く音に近いと言われています。産湯のように人が鍋底池に浸かる宗教的儀式としても使われるそうで、産湯を温める鍋から鍋底池と名付けられたとも。ここは母体回帰の地でもあるんですね。鍋底池の透き通った青色は、怖いほど美しかったです。(2011年04月21日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
通り池(とおりいけ)鍋底池(なべぞこいけ)
住所 :沖縄県宮古島市伊良部佐和田
電話 :09807-8-6250(宮古島市伊良部町役場商工観光課)
時間 :見学自由
入場料:無料
駐車場:無料20台