南極観測船ふじは1965〜1983に活躍した砕氷艦。今は愛知の名古屋港にて博物館として第二の人生を歩み中です。調査団の様子を不必要なまでにリアルなマネキンで再現しています。
我が国初の砕氷船
以前東京品川区の巡視船・宗谷について書きました。宗谷は資金不足のために、貨物船を改造したものだったので、船体が小さく老朽化が進んでいました。
でも宗谷の4,800馬力(1944年当時)に比べてふじは12,000馬力(1965年)。厚さ80センチの氷を割って進むことができる、日本初の砕氷艦なのです。ふじは南極の観測、物資・人員の輸送に使われました。
力の入ったマネキン
宗谷と同じく、ふじの内部にもたくさんのマネキン人形が置かれ、当時の乗組員たちの様子を再現しています。マネキンというだけで珍な香りがただよってしまうのですが、ここのマネキンはかなり力が入ってますよ。右奥の調理室の中をごらんください。
ここまでリアルにする必要があるのか?
一瞬、本物の乗組員の方が調理されているのかと思ってしまいました。ここまでリアルにする必要があるのかというぐらい丁寧に作られたマネキンです。コロッケやキャベツの千切りなどもレストランの食品サンプル並で美味しそう。
日本人によくいるタイプ?
みんな「この人知り合いの誰かに似てるんだよなー」と言わずにいられない、日本人によくいるタイプ。めちゃくちゃイケメンでもなく、ブサメンでもなく。実に上手い具合に中庸にランディングしている顔なんです。
以下『プロジェクトX』のテーマ曲で
いやだからこそ、南極という過酷な地で頑張った乗組員たちは「あなたの、私の、お父さん・お兄さん」だったんだなあと胸が熱くなるのです。心に『プロジェクトX』のテーマ曲が流れます。
床屋さんは手先の器用な乗組員
航海の約5ヶ月間、船内には乗船者が230人もひしめいていました。食堂に調理室、幹部の居室の士官寝室に理髪室。手術のできる医務室や歯科まであったんですよ。医師は医師免状を持ったホンモノのお医者さんですが、床屋さんは手先の器用な乗組員が髪を切っていたんですって。
南極観測船の大問題
冒頭に書いたように南極観測船の初代は宗谷、2代目はふじ、3代目はしらせ、そして2009年からは現在建造中の2代しらせが就航。ここで問題なのが南極観測船の老朽化ですよ。
メンテナンスに莫大な費用が
宗谷もふじも、博物館展示のために莫大な費用がかかってます。2007年11月14日の朝日新聞によると、宗谷は年間維持費が6千万円、ふじは改修費用13億円に加え年間維持費は3千万円もかかるのだとか。さらにメンテナンスのために必要な費用は今後数年間に、数百万から数千万円プラス。
3代目しらせの運命やいかに
しらせは引退後の行き先が決まっていません。自衛艦なので外国に売るわけにもいきませんし。南極地域観測統合推進本部は「誰か、しらせ買いませんかー!」と半分涙目。だって誰も手を挙げないと、スクラップになる運命だから。
宗谷とふじは幸せ者
ここはいっちょ、ワタクシのポケットマネーで……と名乗りを上げたいところですが、整備にかかる費用は90億円。……。現在までに七つの企業・団体から名乗りがあったそうですが、条件が折り合わないと廃棄処分に。維持費用の問題はありますが、現在博物館として余生を送ってる宗谷、ふじ、あんたたち幸せ者だよ。(2008年04月06日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
南極観測船ふじ(なんきょくかんそくせんふじ)
南極観測船ふじは2017年03月25日に「ふじの功績と南極の魅力を探る」をテーマにリニューアルオープンしました。この記事はリニューアル前のふじの様子になります。住所 :愛知県名古屋市港区港町1-9
電話 :052-652-1111
時間 :09:30~17:00(夏季に夜間延長あり)
休館日:月曜日 ※GW・7月〜9月・年末年始・春休みは無休 臨時休館 冬期にメンテナンス休館
入館料:300円(単独券 ※近隣博物館の共通券あり)
駐車場:有料