人魚と言えば海のイメージ。でも琵琶湖には人魚にまつわる伝説が数多く残っています。滋賀県の願生寺には寺宝の人魚のミイラが祀られています。悲しい琵琶湖人魚の伝説をご紹介します。
滋賀県の人魚伝説のお寺
私は個人的な興味から、日本全国に伝わる人魚伝説の地を訪ねています。人魚そのものや人魚を食べたという八百比丘尼の伝説には心惹かれるものがあります。人魚のミイラが残っているという東近江市の願成寺(がんじょうじ)にも足を運ぶことにしました。
聖徳太子と結び付けられた人魚伝説
人魚のミイラや伝説は全国各地に残っていますが、琵琶湖周辺のものは聖徳太子と結び付けられた人魚伝説が特徴です。人魚は淡水魚だったのでしょうか? 端が見えないほど巨大な湖ですから、昔の人は人魚が琵琶湖に住んでいると思ってもおかしくはありませんね。
『日本書紀』に伝えられる人魚
琵琶湖の人魚伝説は『日本書紀』にあります。「619年の夏に、琵琶湖にそそぐ蒲生河に人間のような異形のものがいた」という記述があります。これを人魚とするならば、日本書紀の言い伝えが最古かもしれません。また日本書紀には「摂津の国の漁師の網に、魚でも人でもない不思議なものがかかった」とも伝えられています。
聖徳太子が調査を命じた、不思議な生物
願成寺は聖徳太子が創建したと言われるお寺です。寺に伝わる古文書にはこう書かれています。
先の日本書紀の「人間のような異形のもの」について知らせをうけた聖徳太子は、人魚に違いないと確信します。そして人魚をそのままにしておけば災いが起こるとして供養を命じました。
美しい尼僧の世話をする謎の小姓
また別の伝説もあります。
昔願成寺に美しい尼僧がいました。すると美しい小姓がどこからともなくやってきて、尼僧の身の回りの世話をし始めました。やがて村人たちはこの小姓に嫉妬して、正体を怪しむようになりました。そしてある日村人が小姓の後をつけると、佐久良川の淵で小姓がスッと姿を消したではありませんか!
捉えられてミイラにされてしまった小姓
村人が後日川をさらってみると、人魚が網にかかりました。この人魚は小姓に化けて尼僧に近づいたのでした。仏に使える身に懸想するとはふらちな奴と、怒った村人は人魚をミイラにしてしまいました。そして以降、人魚のミイラは見世物にされたりお金持ちに買われたりして各地を転々としたのでした。
泣いたミイラは無事願成寺へ
しかし人魚のミイラは夜になると鬱々とした声で泣くようになったため、供養のために尼僧の眠る願成寺へと戻されました──以上が願成寺に伝わる人魚伝説。
この伝説の人魚は女ではなくて男なんですね。いや尼僧を慕う女人魚が小姓に化けていたという百合的物語もありかな。なのに人魚かわいそう……。ミイラになってまで泣いて戻りたがるなんて、純愛だと思うんだけどなあ。
人魚サミット開催の地
平成12年(2000)には、願成寺のある蒲生町(合併前)で「人魚サミット」が開かれました。参加したのは人魚伝説が残る和歌山県橋本市、新潟県大潟町、福井県小浜市、滋賀県日野町。これ盛り上がったのかしら? 境内は人魚サミット記念碑がポツンと残っていました。(2016年01月09日訪問)【麻理】
参考文献
地図&情報
願成寺(がんじょうじ)
住所 :滋賀県東近江市川合町950
電話 :0748-55-0155
駐車場:無料