天皇と呼ばれた大実業家による夢の寺院「越前大仏・清大寺」【福井】

越前大仏
もしあなたが大富豪だったら何をしたい? 福井県勝山市には、ある大実業家が建立した巨大な寺院、清大寺があります。天皇と呼ばれたある男の生涯とともにご紹介いたしましょう。

大富豪はパノラマ島の夢を見るか

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もし自分が超大金持ちなら、江戸川乱歩の『パノラマ島奇談』のように、広大な土地に自分の思うまま、夢の都を築いてみたいという人もいるでしょうね。それを実現してしまったのが相互タクシー株式会社の創業者・故・多田清氏であります。

タクシー王・多田清氏

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明治38年に勝山の裕福な庄屋の息子として生まれた多田清ですが、子供の頃に家が没落。丁稚として働き始め様々な職業に就きました。26歳の時タクシー運転手からタクシー会社の経営に着手。持って生まれた経営の才によって業績を伸ばしました。

大阪随一のタクシー会社

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昭和40年代には車両保有台数1000車を越える、大阪随一のタクシー会社に成長。タクシー業界のドンとして君臨し「多田天皇」とまで呼ばれるようになりました。オイルショックや不況もその天才的な経営手腕で乗り越え、多田氏は一代で巨万の富を築きあげたのでした。

380億円の寺院建立

越前大仏
晩年になり多田氏は「今の自分があるのは世間の人びとに迷惑をかけ借金をしてきたから」と「人生借金返済論」を述べ、慈善事業や寄付に熱を入れました。その一番大きな返済がこの清大寺なのであります。総工費はなんと380億円。

最高額のオヤジ系珍スポット

越前大仏
私は珍スポットの分類として、一家の主が突然思い立って建築した珍スポットのことをオヤジ系珍スポットと呼んでいるんですが、清大寺はこれまで見た中でも究極の、そして最高額のオヤジ系珍スポットです。

何から何まで巨大

清大寺はとにかくデカイ。大仏殿は間口58×奥行き48×高さ52mの鉄筋コンクリート造り。大仏は奈良の大仏を上回る大きさで、座像としては日本最大(ちなみに世界最大の大仏は牛久大仏)。びっしり並んだ1281体の小仏像も整然としすぎて現実感ゼロ。まるでCGのよう。

ギネス認定! 身長120mの世界一の巨大大仏「牛久大仏」【茨城】
茨城県の牛久大仏の大きさはハンパじゃありません。身長120メートル、ギネスブックに認定された世界最大の大仏です。なんと自由の女神の3倍、奈良の大仏が手に乗る大きさです。

京都の東寺を抜き日本一の五重塔

越前大仏
大仏殿の隣にある五重塔は高さ75m。京都の東寺を抜いて日本一の高さです。オヤジ系珍スポットのオーナは塔が大好きなんですが、個人所有でこんな本格的なものは前代未聞。

ゴーストタウン化した門前町

越前大仏
でもこんな立派なお寺なのに観光客がほどんどいないんですよ。門前町の商店街はほとんどのお店のシャッターが閉まっています。ほとんどゴーストタウン。人っ子一人いないんで「サイレントヒル」や「バイオハザード」の登場人物になってしまったかのような不気味さが……。小雨とはいえ、日曜日にこの状態なのは心配になります。

非常に残念なニュースが

越前大仏
残念なことに、多田氏死去後の96年に相互タクシーが国税局から追徴課税を受けたことで不動産会社の経営が悪化。2007年06月07日の毎日新聞の記事「<越前大仏>五重塔など公売へ 市税滞納が原因」にはこんなニュースが載っていました。

相互タクシー(本社・大阪市)の創業者、故・多田清氏が出身地の福井県勝山市に建立し、日本一大きな「越前大仏」で知られる大師山清大寺にある五重塔などが公売されることになった。02年に宗教法人化するまでの市税滞納が原因で、同市が04年に差し押さえていた。11月をめどに正式な価格を決め、購入希望者を募る

<越前大仏>五重塔など公売へ 市税滞納が原因(毎日新聞 2007/06/07)(リンク切れ)

どなたか買いませんか?

越前大仏
評価額は47億円だそうです。どなたか五重塔買いませんか? ちなみにこの写真の遠くに見える勝山城も多田氏が建てたものだそうです。なんともスケールの大きな話です。(2007年06月10日訪問)【麻理】

参考文献

地図&情報

越前大仏(えちぜんだいぶつ)大師山清大寺(だいしざんせいだいじ)

住所 :福井県勝山市片瀬50字1-1
電話 :0779-87-3300
時間 :夏季:08:00~17:00(入館は16:00まで)
冬季:平日 09:00~16:00、土日祝 08:0~17:00
休業日:年中無休
拝観料:500円
駐車場:無料
関連URL:越前大仏【公式】

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